親族関係図

1.親族関係図&相続関係説明図の作成

親族関係図について

以下のような場合に親族関係図が大変お役にたつと思います。

支援の現場では、相続関係説明図よりも役に立つ資料になるかもしれません。

①身元引き受け人となる親族がいないかな?

 施設入所や入院の際、保証人や身元引受人を確認されることがよくあるとおもいます。

 いままで疎遠で連絡がとれてなかったり、連絡先がわからなくなっていることはありませんか?

 この様な場合、親族関係図の作成段階で住所等が判明し、連絡を再開することも可能となります。

 保証人や身元引受人として一番ふさわしい方であることを施設や病院関係者に説明できるようになります。

②今は相続は関係ないけど、将来に備えて少し範囲を広げて相続人等を調べておきたい。

 親族の高齢化が進み、誰から先に亡くなってもおかしくない状況が発生しています。

 不慮の事故等でお子さんから先に亡くなってしまう場合も考えられます。

 将来の相続手続にそなえて、事前に親族関係を調査しておく価値はあります。

 また、遺言書作成時における、特定受遺者(相続人以外に遺産をあげたい人)を指定する際にもご活用頂けます。

 受遺者が既にお亡くなりになっていたなど、指定を間違えると、遺言執行や遺産分割協議時に手続が頓挫してしまう
 恐れがあります。

 

戸籍謄本等を取得できる範囲(戸籍法 第10条)

 通常は、配偶者、直系尊属もしくは直系卑属の分のみしか取得できません(黄色の部分のみ)。
 専門職に依頼することで、最小限の負担で、必要な分すべてを取得することができます。

戸籍謄本等を取得できる範囲

 

相続関係説明図について

はじめに

 死亡により相続が発生します。相続人の調査が始まります。

 子どもや父母が相続人の場合はあまり問題ありませんが、
 兄弟姉妹が相続人の場合は相続人の全員の調査を行うことが難しい場合があります。

民法には886条から959条まで、家族法の一部として相続に関する規定が定義されています。

 例えば、被相続人(死亡したご本人)が残した財産については、遺言が無い限り、相続人が協議することによって自由に分割することができますが、うまく協議がまとまらないこともあります。

 そのため、民法900条には法定相続分として、各相続人が承継する財産の割合があらかじめ決められています。

 民法900条(法定相続分)※要約

 第1順位者は子どもで、子どもが存在する場合は、配偶者が2分の1、子どもが2分の1の割合で相続します。
 配偶者がいない場合は、子どもが2分の2の割合で相続します。

 第2順位は父母で、父母が存在する場合は、配偶者が3分の2、父母が3分の1の割合で相続します。
 配偶者がいない場合は、父母が3分の3の割合で相続します

 第3順位は兄弟姉妹で、兄弟姉妹が存在する場合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1の割合で相続します。
 配偶者がいない場合は、兄弟姉妹が4分の4の割合で相続します。

 また、民法901条には代襲相続として、相続人が相続前に死亡していたり相続欠格や排除によって相続権を失っていた場合のため、その相続人の承継者である子どもがその相続権を引き継ぐことが定義されています。

 民法901条(代襲相続)※要約

 1.相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。
   ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、
   前条(900条)の規定に従ってその相続分を定める。

 2.前項の規定は、兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する(兄弟姉妹の場合はその子どもまでで終わり)。

 つまり、第1順位者である子どもの承継者は、孫やひ孫などの直系卑属となり、第2順位者である父母の承継者は、祖父母などの直系尊属となり相続人が見つかるまで引継ぎます。ただし第3順位者である兄弟姉妹の承継者は、その子どもまでとなります。

第3順位の相続の場合、相続人が大勢になる場合があります。
 

 もうお分かりになると思いますが、第1、第2順位者の相続人がいない方が死亡した場合、第3順位者の相続人である兄弟姉妹の数によってかなりの人数の相続人が発生することがあります。

 また、兄弟姉妹もすでに死亡している場合、その子どもまでが相続人となるため、これまで一切面識の無い方々が相続人として登場してくることがあります


 相続手続(例えば、預貯金口座の承継など)は、相続人全員の承諾(署名+実印+印鑑証明)が必要になり、遺産分割協議書の作成なども相続人全員の承諾が必要となります。

 つまり、一人でも相続人を忘れて手続を進めた場合はその手続は無効となる恐れがあります。

 そのため、相続手続においては、相続関係説明図の作成が肝心となります。相続人全員を正しく掌握して、相続人代表者を決めて、相続手続を行う。これがスムーズな相続手続の基本的な流れとなります。

兄弟姉妹の戸籍謄本はどうやって取得するの?

 ここで新たな問題が発生します。

 現代社会は人間関係が疎遠となり、兄弟姉妹の連絡先がまったく分からなくなっている場合などがよくあります。

 この場合、被相続人の戸籍等から相続人を調査していく事となりますが、戸籍謄本は個人情報の塊であるため悪用される恐れがあり、その取得できる人の範囲が法律で厳しく制限されています。

 戸籍法(昭和22年12月22日法律第224号)

 第10条  戸籍に記載されている者(その戸籍から除かれた者を含む。)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属
 その戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書(以下「戸籍謄本等」という。)の交付の請求をする
 ことができる。※一部省略

 したがって、傍系である兄弟姉妹の戸籍を取得するためには、それぞれご本人から委任状を取得する必要があります。
 
 しかし、そもそもその連絡先等が分からない事が発端なので、このままでは相続関係を掌握することは困難となります。


 そこで、戸籍法では専門職等による第三者取得を認めています。

 第10条の二  前条第1項に規定する者以外の者は、次の各号に掲げる場合に限り、戸籍謄本等の交付の請求をすること
 ができる。この場合において、当該請求をする者は、それぞれ当該各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければなら
 ない。※一部省略

 3.第1項の規定にかかわらず、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士又
 は行政書士は、受任している事件又は事務に関する業務を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求
 をすることができる。※一部省略

 このように、行政書士は業務の遂行に必要な範囲であれば、必要な全ての戸籍謄本等を職務上請求することができます。

まとめ


 複雑な相続になりそうな場合、相続関係説明図の作成を専門職に依頼することで、その後の遺産分割協議書の作成や相続手続もスムーズにすすめそうなことがお分かりになると思います。

 相続手続は肉体的にも精神的にも負担のかかる非常に大変な作業となります。少しでも皆様のお力になれれば幸いです。